ひねもすのたのた

とりあえず日常かな

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赤狩り

もちろん、赤狩り――マッカーシズム――のことは知っていた。
アメリカのさまざまな人々、教養のある人も、高い地位をもつ人も、
兵士も士官も、ハリウッドの俳優や監督たちも、
赤狩りによって職を追われたり、投獄されたりした。

しかし、赤狩りが単なる歴史ではなく、現在も起こりうることとして重く感じられたのは、
劇作家リリアン・ヘルマンの『眠れない時代』を読んだときだったと思う。

彼女は、オードリー・ヘップバーン主演の映画『噂の2人』の原作者
(軽いタイトルだけど主題は重い。原作タイトルは『子供の時間』)として知られ、
『マルタの鷹』を書いたダシール・ハメットのパートナーでもあった。
(追記・ルイ・アラゴンとエルザ・トリオレの友人でもあったそうです)

赤狩りの時代、ハメットは共産党員だということで逮捕される。
彼女にも召還状がくる。
あの、悪名高き「非米活動調査委員会」から。

ハリウッドにもこの頃、監視の目が光らされており、
映画関係のスタジオはそれぞれ、従業員に
「共産党員とは関係していないこと、急進派と接触しないこと等々」を誓わせることになっていた。

監督やプロデューサー、俳優たちが委員会に召還され、尋問された。
彼らの多くは仕事をほされるのを恐れ、“友好的な証人”になったという。
友好的な証人、とはつまり「あの人は共産党員だ」と密告すること。
それが真実であれ、単なる疑いであれ、まったくの捏造であれ。

召還前には、「自分は友好的な証人にはならない」と宣言していた人も、
証人として出頭すると、思いつくすべての名前を共産党と関係があるとして、話し出す、
そんな状況があたりまえだったという。

疑いをもたれた人の多くは、このように友好的な証人となってあることないこと話すか、
投獄されるしかなかった。(さぞや刑務所がいっぱいになったと思うが)
リリアン・ヘルマンは召還され、友好的な証人にならなかったにもかかわらず、
投獄を免れたが、これは稀有なことだったようだ。

著名な人々も容疑をかけられた。
原爆の父と呼ばれるロバート・オッペンハイマーもそのひとりだ。
チャップリンもまた、共産主義に好意的として何度も召還されたという。

私にとって衝撃だったのは、
赤狩りは「共産主義から民主主義国家を守る」などという大義から
始まったものではまったくなかったらしいということだ。

まだ続くので、読む元気のある人は下をクリック

赤狩りの主導者であったマッカーシーは、
反共主義者でもなければ、国家主義者でもなかったという。
ただ、他人を操作することに長けていた。
(このあたりは、共産主義思想を信奉していなかったといわれる毛沢東によく似ている)

1950年、上院議員だったマッカーシーは、2年後に控えた選挙の争点を探していた。
そのために開いた会合で、ある人物が「世界における共産主義の勢力」はどうか、と述べた。

マッカーシーはこれにとびつき、
「政府には危険な共産主義者たちに満ちている」「やつらを叩きのめせ」といった
スローガンをがなりたてはじめた、というのだ(ロービア『マッカーシズム』)。
まさに茶番劇である。

しかし、茶番劇はたちまち恐怖政治に姿を変えてしまった。
マッカーシーが創作したストーリーに沿ってすべてを説明しようという試みが始まった。
当時、ソ連や共産主義に対する恐怖感が人々の中にあったことは間違いない。
と同時に、共産主義に希望をもつ人もいた。
だからといって、そういう人々が革命を目指したわけではないだろう。

マッカーシーはしかし、恐怖や不安、弱さを利用して、人々に自分のストーリーを信じさせ、
翻弄する方法をよく知っていた。
マッカーシー自身は、真の怒りや悲しみをもたなかったようだという(『マッカーシズム』)。
だから、人間の弱みにつけこみ、人々を絶望に追い込んでも何とも思わなかったのか。

人間は弱い、と思う。
冤罪でほとんどの人がすぐに自白するのも、弱さの表れだろう。
人生が崩壊するのを目の前にして、自分の信念を貫くのはあまりにも困難だ。
私も、赤狩りのような局面で、召還されたら何を言い出すかわからない。

権力をもつ人間が、人間のそういう弱さにつけこむことは、許されないことだとは思う。
でも反面、私はその弱さにつけこむことを許した傍観者たちや、
何も考えずに“時流”に乗った人々にいちばん大きな責任があるようにも感じてしまう。

これは歴史上何度も起こってきたことだから、なおのこと。
個人の暴走を許さないのは、われわれ――私も――でなくてはならない。

狂気の時代が始まったとき、それに抵抗するだけの強さをもっているのは、
ほんの一握りの人間である。
だからその他の大多数である弱いわれわれ――もちろん私も――は、
狂気の時代が始まる前にそれを止める努力をしなければならないのだと思う。

マッカーシー時代、アメリカの世論調査では、彼に好感をもつと答えた人が50%に達したという。
そして、意見なし、と答えた人が20%いた。
これが問題の本質を物語っているのではないか。

リリアン・ヘルマンはこう述べている。
「われわれは、どんなナンセンスでも何度かくり返されれば、
その意味や根源を調べもせず、ただうのみにすることに同意したのだった」


シリーズ(笑)・人間の狂気??はこちら。
ミルグラム実験
スタンフォードの心理実験
集団の狂気

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Comment[この記事へのコメント]

赤狩りは日本にもあった 

当時日本は、アメリカの全面占領下にあって、アメリカ軍(GHQ)によって統治されていた。
今のサイパンやグァムみたいなものでしょうか?。
で、当然アメリカに起っていたマッカーシズムは、当然のように日本でも行われた。
いわゆるレッドパージです。
A級戦犯は釈放され、変わりに共産党員や組合活動家が公職から追放される。
しかも恐ろしいことに、三鷹下山松川事件など不思議な謀略事件が頻発する。
当時の鉄道は、今のアメリカの航空機以上に、国民にとっては信じられないほど重要な交通手段であり、其れを使った、連続テロ事件は、日本人にとっては今日の9・11事件以上のの大騒動だった。
当時の一番重要な交通手段を使った大量殺人、凶悪な連続テロ事件。
当時の日本共産党は、結党以来数十年の歴史はあったが、敗戦までは一部知識階級以外で、その存在を知るものはいなかった。
これ等の事件の後ですよ。一般国民の間に何と無く怖い共産党のイメージが定着したのは。

TBが上手く出来ませんので、URを記入しておきたいんですが、それも上手く行きません。
『相次いだ謀略事件(松川事件等)と陰謀論 』
政治 / 2008-03-08

キャノン機関 

  • えあしゃ 
  • URL 
  • at 2008.03.11 22:31 
  • [編集]
下山事件は、ドラマやドキュメンタリーなどでよく取り上げられる
知っていますが、松川事件は知りませんでした。

いま中野学校の本をのろのろと読んでいますが、
それにGHQの諜報組織キャノン機関がこれらの事件に関与したという疑いも書いてありました。
こういう場合、標的にされた人間は逃れようがないですね。

URLためしに編集で入れてみてくださいませ。

9・11事件と松川事件との、余りにも多い共通点 

全てのアメリカ人を覆った恐怖のマッカーシズムも突然に終結する。
何が、理由だと思いますか。?
報道人やハリウッドや科学者や政治家をマッカーシーが標的にしている間は政府は全面的に赤狩りに協力した。
マッカーシー上院議員、調子に乗りすぎて、『アメリカ軍内部にも共産主義者がいる』と軍隊でも始めようとして大失敗してしまう。
>標的にされた人間は逃れようがない、はそのとおりで助からない。しかし恐ろしい諜報機関よりも恐ろしいものが、この世には有る。それが軍です。



松川事件や下山事件はアメリカ軍謀略事件でしょう。実行犯は多分キャノン機関ですが、捜査して証拠(偽)を集め起訴して裁判で死刑判決を出したのは日本の司法当局。
色々な有罪物証や有罪証言が裁判では提出され大勢に死刑判決が出された。普通の一般庶民は大量殺人テロをたくらむ『恐ろしい共産党』の話を、その時はみんなが信じた。
9・11事件とそっくりだと思いませんか。?



相次いだ謀略事件(松川事件等)と陰謀論
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/d2f659055ef9ee856a62842d121df1cb

陰謀論、論者たちの9・11陰謀論、論。 http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/08c49753d2fabd44d31072622edbed9b

NoTitle 

  • えあしゃ 
  • URL 
  • at 2008.03.12 22:22 
  • [編集]
>捜査して証拠(偽)を集め起訴して裁判で死刑判決を出したのは日本の司法当局

これが許せないですね。
一般大衆を“洗脳”するには、それがたぶんいちばん手っ取り早い手段だと考えたのでしょう。
このころから司法は法を曲げるのに一生懸命だったんですね。

下山事件 

  • ×第二迷信 
  • URL 
  • at 2008.03.15 01:20 
  • [編集]
松川事件や三鷹事件は、列車テロ事件ですが、下山総裁暗殺(?)事件は、たまたま(?)轢死体で発見されただけで、「鉄道テロ」とはいえないですね。

映画にもなりましたが、結局は「謎」のまま。
(死刑判決は出ていない。時効成立~といっても「殺人事件」として断定もされてないが)

「得」をしたのは誰か?というのはともかく、本気ででっち上げするなら、もっと手はありそうに思います。

(下山事件の映画。ルミノール試薬を散布して現場検証するシーンだけが、リアルに思い出されます。)

松川事件 

下山事件は謎のままでしたね.松川事件は,証拠品とするモンキーレンチ (自在スパナ) が出て来て,でっち上げだと私は直感しました.あんな道具でレールの継ぎ目が外せるか,しかも夜中に三十分足らずの間に,と思いました.検察の奴らは鉄道の技術について知識無さ過ぎ.

下山事件は 

  • えあしゃ 
  • URL 
  • at 2008.03.15 17:11 
  • [編集]
×第二迷信さん
自殺という話もあったんでしたっけ。

>ルミノール試薬を散布して現場検証する
私もドラマを見たとき、現場検証のシーンだけが頭に残っています。

やっぱり 

  • えあしゃ 
  • URL 
  • at 2008.03.15 17:14 
  • [編集]
三ねんせいさん
>検察の奴らは鉄道の技術について知識無さ過ぎ

えぼりさん(冤罪と自白のコメント欄)がおっしゃるように、
知識がない方が都合がいいってことなんでしょうね。
しかも、この状況が現在も続いているとは。トホホ、というより恐ろしすぎ…

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